かすみ


小休止の後、再び街へ出る。

宛も無いので日が暮れていくのを見届けようと、マリオスの展望台に向かってみる。

駅の地下に新しくできた通路を初めて通る。

そこだけはひんやりとした空気が充満し、真夏の陽気に落胆していた僕に、違う街にきた事を教えてくれる。

地上に出ると、温い油のような湿気が体にまとわりつく。

ビルの中も温度自体はさして変わらず。
地球に優しく僕に厳しい現実。

エスカレータとエレベータを使い展望台へ。

しかし一番の見晴らしを持つ一画はレストランになっていて、団体さんが騒いでる。

訳の解らぬ敗北感を抱きながら、そこを後にする。

こちらに来る前、デジカメを購入しようかと悩んだのだが、やはり買うべきだったかと若干の後悔を胸に抱いているせいか、家電量販店方面へ足が向かう。

手前の信号待ちの間、空を見上げる。

霞がかった空は、結局あの山の威容を隠したままだ。

橙色に染まる空を追いかけ、歩き続ける。

目の前に杜の大橋という長い橋が現れる。

そこからの見晴らしは遮蔽物も無く、夕陽に炙り出される霞の中の山々のシルエットが美しい。

波打つ水面に夕陽が映り輝いて。

やはりカメラを買うべきだったな。

そう思いながら、携帯電話とライカIIIaで撮影。

戦前のエルマー35mmはノンコーティングで逆光に弱い。
夜間のスナップ用に超高感度カラーネガを入れているので、あまり期待できないな。

そんな事を思いながら、夕陽を見送る。