2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

むかし

寺院の敷地から出ると、右手に先ほどの家族連れが目に入る。しばらく墓参の様子を見つめ、野球少年と目が合うのと同時にその場を後にする。 水路に寄り添う緩い坂道を下る。父の友人の実家の向かいにある古い木造家屋から、お婆さんとその孫が現れ、道を横切…

あとに

あの日に見た空を思い出す。あの日の出来事、雹、北風に乗り押し寄せる雲、夕日、羽のように舞う雪。 あの時と今、あまり変わっていないのかもしれない。残りの僅かな変化は、誰かに見出してもらえるのかもしれない。 おそらく、自分では見つけにくい場所に…

えかき

なんとなくハイクはご無沙汰。良い写真も撮れないし、絵も描けないので。 ここも文章を書く気力が湧かない。 曖昧で散漫な気持ちを引きずる。 今の状況を量る術もなく、ぼんやりとしている。 来月になれば、ひとつの答えは出るだろう、と思っている。 ぼんや…

ひとりごと

朝からカレーを作る。親父の要望と母の負担軽減の為に。人参のすりおろしをいつもより余計に加えたせいか、少々甘めの仕上がりになる。まあ、健康の為だと思って下さい。偏食の親父さん。市販の粉末コーンスープもいつも通りに。ホールコーンを加えれば、そ…

たばこ

遠い記憶と半年前の記憶を重ねながら、斜面に添うように並ぶ小さな墓地の間の坂道を上り始める。このくらいの時期に訪れるのは初めてかもしれない。覚えのある、でも知らない景色。緑と木陰と青空と乾いた空気。ここでは初めて感じる新緑の香りが加わり、足…

かれに

水量が多いのか。道に沿って流れる水路からのせせらぎ。街道を走る車のパターンノイズ。風にそよぐ木の葉の擦れる音。自分の靴音。 自分の住む街の深夜のようで。けれど眩しい日差しと乾いた空気を肌で感じ。違和感が喜びに感じられる。 道の突き当たり。寺…

その後

「事件」の方は無事に処理を終える。後から明らかになる事実があったり。気付かないこちらも悪い。それも事実。信義則に従い職務を遂行するのが当然の職種。 故に内側には注意が足りなかった。相手方の社長さん。 予定を全てキャンセルして対応して下さった…

生まれてから最期まで

初めて家に来た猫は、一駅隣の駅前で父が拾ってきた白い長毛の子猫。近所の猫との喧嘩で負った傷が悪化し、三年程で旅立ってしまった。 次にやって来たのはキジの雌猫。なんとなく居ついた。そいつが産んだ子猫が六匹。その内二匹は里子に出した。うち、一匹…

そして

祖母が亡くなったとき、早くに亡くなった祖父の骨とその名が刻まれた墓誌を、盛岡に新たに建てた墓に移した。以前訪れた時に迷い込んだあのお寺が、その元々家が檀家だった所だと、帰宅後に母から聞かされた。 あの急な石段を、叔父達はあの墓誌を担いで降り…