あとに


あの日に見た空を思い出す。

あの日の出来事、雹、北風に乗り押し寄せる雲、夕日、羽のように舞う雪。


あの時と今、あまり変わっていないのかもしれない。

残りの僅かな変化は、誰かに見出してもらえるのかもしれない。
おそらく、自分では見つけにくい場所にある。


背中に何かを感じるような、そんな感覚をその場に残し、墓前を後にする。

畑の畦道と区別のない道を、足下の感触を確かめながら来たとおりに下り始める。

先程の見慣れない作物をもう一度眺める。

遠くに畑の所有者らしき人が作業をしているのに気づく。
これが何なのか聞いてみたいけれど、大声を出す事に慣れていないのと、その他諸々の事情で諦める。

こういう自分は、やはり情けない。

変わらないのはそんな所ばかり。


斜面を下り、その下の公道に面した墓地に、三代程の家族連れが墓参に来でいた。

野球のユニフォーム姿の少年、家族内の会話、花。

しばらく見ることの無かった、そんな光景を数秒見つめ、その場を後にする。

彼の姿は見ずに去ることにする。


また期待させては可哀相だし、近いうちにまた来る、そう思って。

前回のような感傷は必要ない。


一期一会には変わりないけれど。


そうする事に決める。