2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

えそら

近いうちにまた来る、という曖昧な確信を持ってこの街を後にする。動きだした景色を眺めつつ、ここにいるきっかけを思う。 望まずして一方的に断ち切られたもの。単純に裏切られるという事に慣れることは、この先いくら時間を重ねても無いだろう。 昨晩の追…

あるく

漱石さんだか英世さんが飲み込まれては吐き出されるのを数度繰り返した後に、諦めて窓口で盛岡までの切符を求める。「片道ですか?」と、愛想の良い窓口の女性に訊かれ、思わず往復と答えそうになるのを堪えながら硬い厚紙の切符を受け取り、尖った角の感触…

ながめ

仄暗い階段を昇って行くと、ホームと屋根の隙間から青空の色が際立って見えた。 気温は徐々に上昇し、初夏の、でも乾いた肌触りの良い風が構内を吹き抜けていく。同じ場所は待合室を必要としない、様々な意味で丁度良い季節。時間は容赦なく誰にも平等に過ぎ…

こおる

今よりも冬が寒かった頃。父が子供の頃は国道4号線の交通量は疎らで、凍結した路面の上で「下駄スケート」で遊んでいたそうだ。馬淵川も当時は凍結し、スケート遊びが行われていたのだが、ある時氷を踏み抜いて亡くなった子供が出て、それ以来禁止になったと…

ながれ

この辺りの馬淵川は流れが穏やかで、看板で見かけたアユ釣り場のイメージと一致している。あの時感じた恐怖感とは遠い場所に感じる。川沿いを左に進む。風に揺らめく木陰の下を歩く。影の主を見上げると未確認飛行物体的外観の古い外灯が視界に入る。その草…