えそら

近いうちにまた来る、という曖昧な確信を持ってこの街を後にする。

動きだした景色を眺めつつ、ここにいるきっかけを思う。


望まずして一方的に断ち切られたもの。

単純に裏切られるという事に慣れることは、この先いくら時間を重ねても無いだろう。


昨晩の追い討ちをかけるような出来事、言葉は、今の自分には厳しいものだった。

今ここにある理由を改めて否定されたようなものだ。

流れていく景色を眺め、あの日の出来事を思う。


気分が滅入り、視線を車内に移す。

人を眺めるのが好きで、その姿から人となりを思い、考える。

思い込みでしかない感情移入が絵を描くきっかけになれば良いと思う。

昔考えた漫画のキャラクターに少しだけ似た人を車内で見つける。

背が高く、癖毛で眼鏡の女性。

服装や仕草でその人の自意識を感じ、考える。
意識して見つめると、意識される。
その応酬で更に意識を探る。
視線、鞄を持ち直す手つき、足の重心移動、表情、筋肉の弛緩、緊張。

その人を視る。


描ききれる筈もないけど、視ることで引き出すこともできる。

それが自分のやり方。


不快感を与えない程に視線で引き出せる範囲が、ある意味美しい。

本質までの距離は遠いかもしれないが、その距離感もまた正義だと思う。


踏み込み過ぎない、そのくらいが心地よい場合もあり、見る側も見やすいと思っている。


文字通り絵空事だけど。