けいい


批判は相手に対する敬意の表れだと思っている。

しかし、信じるという前提を殺された後、常に疑う事を考えなければならない苦しみは、次第に感情を腐らせる。



明け方まで考え事をし、言葉を探す。


午前6時前に宿を出て駅の時刻表を眺め、始発、というか、目的地行きの発車まで時間がかなり空いている事を確認する。


朝から一面灰色の空。



伝える事が正しいのか、今の自分は間違っていないだろうか。

いつも疑っている。


やがてホームにやって来た車両はIGRいわて銀河鉄道のものではなかった。八戸行きだからだろうか。

前回の雪景色とは異なり、車窓には緑か連なる。

記憶の中の印象との違いを確かめながら景色を楽しむ。

白い小さな花を付ける名を知らぬ木が彩りを与え、岩手川口を過ぎるころ時折射す日の光がそれを際だたせていく。

奥中山高原に近づく頃には空の色が見えはじめ、山間部に張り付くように広がる水田の姿をより印象的なものにしている。

整備されていない地形を活かす為の不規則な形。全て手作業で田植えをしているのかな。
農機が入っている形跡が無い。


水田の合間に緑の空白と白い円筒形の大きな包み。
牧草だろうか。


曇り空かと思われた灰色は、濃い霞だったのだろうか。

7時を過ぎる頃、だんだんと透き通るように青空が頭上に姿を現す。


山間に時折見える紫色の花。
日射しを受けて、彩を鮮やかに。

自生している藤みたいだな。
初めて見た。

まだ緑少ない山間に咲くコブシの花のように、この藤も新しい季節を予感を知らせてくれている。


到着した一戸は、青空と眩しい日射しで僕を迎えてくれる。