じきゅう

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駐車場の脇から緩やかな坂道を下り始める。

家屋が離れて二棟ほど建つ向かい側に、太陽光発電の設備が備えられていた。

以前訪れた時には無かった新しい設備だ。

これ程の設備投資を回収するまでにはどれ程の時間が必要なのだろうか。


空からエンジン音が聞こえてくる。

エンジン付きのパラグライダーだ。

優雅に空を飛ぶ近代的な娯楽と前時代的な農村風景に佇む最新の設備。


人の生き方は様々だ。


下った先には小さな公園のようなもの、その向かいには大愛堂と名付けられた小さな建物。

饅頭を取り出し、ビニールを剥がして齧り付く。

レンジで少々温めると美味しいというアドバイスから、その状態をイメージしながら食べてみる。

だが現実は予想通りのもそっとした食感と、やや重曹の香りと苦味が強い。
けれど餡の甘味が自然で口に残らず美味しい。


公園と大愛堂の間を下りると水田が広がる。

右手で野焼きをしているようだ。
灰色の空に僅かなコントラストを与える紫煙が登る。

その先には形だけの太陽。

熱は届いてこない。


この水田地帯の畦道を歩きはじめる。


こんなことが、何故か好きだ。